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5月13日
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象牙




概要
象牙とは
象牙とは、主にアフリカゾウやアジアゾウの長く発達した門歯、いわゆる「牙(きば)」から採取される硬質な素材のことを指します。美しい光沢と滑らかな質感を持ち、古代から装飾品や工芸品、印章、楽器などの素材として珍重されてきました。
象牙は細かく緻密な彫刻が可能で、加工後の表面は絹のような光沢を放つため、王族や貴族の調度品としても高い価値を持っていました。古代エジプトや中国、日本などでもその使用は確認され ており、美術史においても重要な位置を占める素材です。
しかし、象牙の採取はゾウの命を奪うことと直結するため、20世紀以降、乱獲による個体数の減少が深刻な問題となりました。このため、現在ではワシントン条約(CITES)によって国際的な取引が厳しく規制されており、多くの国では象牙の新規輸入や販売が禁止されています。現在市場にある象牙製品の多くは、過去に合法的に取引された「古物」として存在しているものです。
倫理的な観点からも、現代では象牙に代わる人工素材や他の動物に負担をかけない天然素材が積極的に使われるようになっており、伝統と保護のバランスが求められる素材のひとつといえるでしょう。
歴史と伝承
象牙の歴史は非常に古く、古代文明の興隆とともにその価値が認められ、世界各地で重宝されてきました。最も早い使用例は、先史時代にまでさかのぼり、狩猟で得たゾウの牙を道具や装飾品として用いていた痕跡が見つかっています。
古代エジプトでは、象牙は高貴な素材として神殿の装飾や王族の持ち物に使われて いました。また、古代中国でも早くから象牙細工が発達し、儀式用の道具や芸術品として用いられました。日本でも飛鳥時代や奈良時代には、仏具や装飾品、貴族の調度品として輸入され、正倉院には象牙を使った工芸品が多数残されています。
中世ヨーロッパでは、キリスト教の広がりとともに象牙製の聖遺物箱や彫刻が多く制作されました。その後、大航海時代に入り、アフリカとの交易が盛んになると、ヨーロッパ諸国は大量の象牙を輸入し、ピアノの鍵盤やチェスの駒、扇子の骨、印章、櫛などに使用しました。
19世紀には産業革命によって象牙の需要が爆発的に高まり、とくにビリヤードの球やタイプライターのキーなどにも利用されるようになります。しかし、この需要の高まりがアフリカゾウの乱獲を引き起こし、生態系への深刻な影響をもたらすことになります。
20世紀後半には、環境保護と野生動物保護の観点から象牙取引に対する規制が世界的に強化され、1989年にはワシントン条約により国際取引が原則禁止となりました。以後、多くの国で象牙の新規販売や取引が制限されるようになり、象牙の歴史は倫理的な問題と深く結びついたものとなっています。
このように、象牙は人類の美術・工芸・実用品の発展に大きな影響を与えてきましたが、同時に自然との関わり方を問い直す象徴的な素材でもあります。
語源
「象牙」という言葉の英語は ivory(アイヴォリー) です。その語源は、非常に古く、いくつかの言語を経て現代英語に至っています。
英語の ivory は、古フランス語の ivurieまたはivorie を経て中英語に入りました。この古フランス語の語源は、ラテン語の eboreus(象牙製の)または ebur(象牙)にさかのぼります。
さらにラテン語 eburの語源は、アフリカに近いセム系言語、特に古代エジプト語やフェニキア語などに由来しているとされ、アフリカの象牙貿易との関連性が示唆されています。例えば、古代エジプト語では象を「abu」と表記していた記録があり、この語が象牙を意味する言葉として地中海世界を通じて広まった可能性があります。
つまり、「ivory」という言葉は、ラテン語→古フランス語→中英語という流れを経て現代英語に入ったもので、元はアフリカ大陸やその周辺の交易文化に根差した外来語に由来しています。長い交易の歴史が、この一語の中に凝縮されているとも言えるでしょう。
石言葉
「清純」「倫理的」「気品」
こんな人におすすめ
・民族的なアクセサリーが好き
・芸術性を高めたい
・ 気品を高めたい
鉱物データ
・象牙
英語名 | ivory |
和名 | 象牙 |
鉱物名 | ー |
化学式 | Ca₁₀(PO₄)₆(OH)₂ |
色 | アイボリー |
モース硬度 | 5~6 |
劈開 | ー |
屈折率 | ー |
結晶系 | ー |
比重 | ー |
光沢 | ー |
主な産地 | ジンバブエ、ボツワナ、ナミビア、コンゴ |